2018年10月9日(現地時間)におこなわれたGoogleの新製品発表イベント「Made by Google」。同じGoogleのイベントとしては「Google I/O」も存在しますが、そちらは主に開発者向けのソフト関連の発表となっており、今回の「Made by Google」はハードウェア発表イベントとなっています。
そんな今年で3回目の開催となる「Made by Google」ですが、発表された製品はスマートフォンの「Pixel 3」シリーズにタブレットの「Pixel Slate」、スマートディスプレイの「Google Home Hub」と、どれも今旬なデバイスばかり。中でもPixel 3はiPhoneのライバルになり得る存在で、非常に興味深い製品ですね。
そこで今回は、Made by Googleで発表された新デバイスや周辺機器の詳細や特徴を解説していきたいと思います。
Pixel 3/Pixel 3 XL
Google製スマートフォンPixelシリーズの第3世代となるのが、今回発表されたPixel 3。ひとつ前の世代になるPixel 2シリーズは、残念ながら日本では発売されませんでしたが、今回のPixel 3はすでに日本でも展開されることが決定しています。
その最大の特徴は、Googleも自信を持って推しているカメラ機能。ハードウェアとしてはフロント部分に800万画素カメラを2台、背面に1220万画素のメインカメラを搭載という、最近のスマホとは逆の構成ですね。これはセルフィーとしての利用を重要視したもので、インカメラに搭載された標準と広角のダブルレンズにより、超広角(iPhone XSと比較して184%も広い)撮影が自撮りスタイルでできるようになっています。
ただしPixel 3のカメラ性能の真価はそのハード構成ではなくソフト面。Googleが持つ優れた画像処理技術やAI/機械学習技術が、最大限に生かされています。例えば超解像ズームにより単眼でも鮮明な望遠写真の撮影が可能で、これは火星探査の技術が応用されているようですね。また、驚きなのが「Night Shot」という機能で、暗い場所の撮影でもフラッシュを用いることなく明るく鮮明に映し出すことが可能に。発表会でもiPhone XSに完勝しているとアピールされており、実際のサンプル画像でも本当に暗所?と思えるほどの魔法のような出来栄えになっています。
他にもカメラをかざすだけで情報を表示してくれる「Googleレンズ」や、ポートレートモードによるぼかすための背景の抽出、最も良い写真を自動で検索してオススメとして表示してくれる機能など、AI技術を最大限に活用。まさにAIカメラと呼べるほどの仕上がりになっています。
そのAI技術はもちろんカメラ以外の機能にも活かされており、生活のサポート機能も進化。例えば、新しく搭載される「Call Screen」機能では、相手からかかってきた電話へのファーストアクションをGoogleアシスタントに任せる事が出来ます。Googleアシスタントが相手の名前や要件を確認し、その内容をリアルタイムにディスプレイで確認するといった感じですね。その後の応答は自分で電話に出ることもできますし、定型文で返したり着信拒否をすることもできるため、迷惑電話への対策として活用できそうです。
仕様面ではディスプレイに有機ELを採用。Pixel 3はディスプレイサイズが5.5インチで、Pixel 3XLはひと回り大きい6.3インチとなっています。プロセッサはSnapdragon 845、メモリは4GB、ストレージは64GBと128GBから選択可能なようですね。ちなみに両モデルの違いはディスプレイの大きさだけでなく、デザイン面にも。Pixel 3には存在しないノッチがPixel 3XLでは存在します。iPhone Xシリーズ他、最近は様々なメーカーからノッチありのフルスクリーンタイプのスマホが販売されているため違和感は感じませんが、ノッチが気になる人はPixel 3を選んだほうが良さそうですね。
カラーはクリアリーホワイト、ジャストブラック、ノットピンクの全3色展開で、OSはもちろんAndroidを搭載。iPhoneと同じくハードとソフトが一元開発された純正スマートフォンですので、Androidスマホの中でも最も先進的で使い心地に優れた、ハイエンドプレミアムスマホと言える存在に仕上がっています。
日本での発売予定は11月1日で、国内キャリアではドコモとソフトバンクが取り扱いを発表ずみ。10月19日AM10時より予約を開始するようですね。日本向けの端末にのみFelica(おサイフケータイ)が内蔵されており、各種電子マネーなどにも対応するようです。Google公式オンラインストアでは予約を受付中ですが、すでにPixel 3は在庫なしの状態になっており、かなりの人気ぶり。iPhone最大のライバルとして、今後存在感をましていきそうですね。
Pixel Stand
こちらは同時に発表されたPixel 3シリーズ向けの純正ワイヤレス充電台、Pixel Stand。Qi対応の充電スタンドのため、Pixel 3だけでなくQiに対応している端末であれば充電が可能です。出力は10Wで急速充電もでき、縦向きでも横向きでも使えるデザインとなっていますね。
ただし、Pixel 3シリーズ向けということでただのワイヤレス充電スタンドではありません。Pixel 3シリーズを充電中はGoogleアシスタントを呼び出すことができ、簡易的なスマートディスプレイとして使えます。例えば、音声操作でスマホ内の音楽を再生したり、今日のスケジュールを確認したり、といった使い方ができるというわけですね。
価格は9504円とワイヤレス充電器としてはやや高価な設定ですが、スマートディスプレイを買うよりはかなりリーズナブル。わざわざスマートディスプレイを導入するほどではないけど、ちょっと体験してみたいという人には最適かもしれませんね。出荷予定は11月中旬ごろとなっています。
Google公式オンラインストアでPixel Standの詳細を確認
Pixel USB-Cイヤホン
こちらも同時に発表されたPixel 3シリーズの付属イヤホン、Pixel USB-Cイヤホン。Pixel 3/3 XLを購入すれば付いてきますが、単体でも販売されることになりました。
その特徴はGoogleアシスタントの起動とリアルタイム翻訳に対応していること。コードの中央にインラインリモコンがあり、中央を長押しするとGoogleアシスタントを呼び出すことができます。リアルタイム翻訳はボタンを長押ししながら「OK Google、〇〇に翻訳して」と言うだけでその後に喋った言葉を翻訳してくれます。言語は英語だけでなく、40以上の言語に対応。Android 9以上を搭載し、Google翻訳アプリがインストールされたスマホで利用可能ということで、Pixel 3シリーズ以外の端末でも活躍しそうですね。
また、ボリュームを大きくするボタンを長押しして、スマホに届いたプッシュ通知を読み上げる機能も搭載。USB-Cによる有線接続で、24bitデジタル再生に対応しています。価格は3,456円、すでに販売されていて公式ストアから購入することが可能です。
Google公式オンラインストアでPixel USB-Cイヤホンの詳細を確認
Pixel Slate
ついにGoogleからもタブレットが発表されましたね。このPixel SlateはOSにChrome OSを搭載した2in1スタイルの製品です。AppleのiPad ProやマイクロソフトのSurface対抗製品と言ったところでしょうか。
Pixel Slateの最大の特徴は何と言ってもそのOS。搭載されているChrome OSはブラウザのChromeをメインインターフェースにしており、その動作はかなり軽量で俊敏。ドキュメントやスプレッドシートなどのGoogle製Webアプリとの連携も完璧で、アカウントさえあれば非常に簡単に使うことができます。ウェブアプリ以外にAndroidアプリも使えるため、だいたいのことはこれ1台でこなせそうですね。
2in1スタイルということで、タブレットとしての利用以外に、専用の着脱式キーボードによりノートパソコンのように利用することも可能。キーボードとの接続はBluetoothでは無く電気的な接触を介したものということで、iPadのスマートコネクタのような感じでしょうか。搭載されている12.3型のディスプレイは非常に鮮明で、293PPIと非常に高密度です。iPad Proが264ppiですのでそれ以上の高精細さということですね。
カメラは前後に装着されており、前面のカメラは広角レンズを採用。複数人でのビデオチャットなどにも最適ですね。他にも電源ボタンに搭載された指紋センサーによるロック解除や、筆圧検知のPixelbook Penでの入力に対応するなど、かなりの高機能デバイスとなっています。
CPUはインテルCeleron / Core m3 /Core i5 /Core i7の中から選択でき、仕様に応じてメモリは4GB~16GB、ストレージは64GB~256GBと変動します。大きさは290mm× 202.mm×7mmで、重さは721gと12.9インチiPad Proよりもやや重めですね。アメリカやカナダでは2018年後半に発売予定で、価格は最小構成で599ドル。アクセサリとなるPixel Slate Keyboardは199ドルでPixelbook Penは99ドルとなっており、トータルすると日本円で10万円近くのなかなか高額な製品になります。日本での発売はまだアナウンスされていませんが、果たして日本上陸となるのでしょうか。
Google Home Hub
やはりGoogleからもスマートディスプレイが発表になりましたね。GoogleはすでにGoogle Homeというスマートスピーカーを発売しており、最近はシェアトップのAmazon Echoを追い上げる勢いで販売台数を伸ばしています。そんなGoogle Homeにタッチディスプレイを搭載し、音声操作だけでなく視覚による情報の確認などもできるようになったのが、このスマートディスプレイGoogleHome Hubになります。
ディスプレイを搭載ということで、普段は置時計やフォトスタンドのような情報表示デバイスとして使用しつつ、呼びかけることで天気予報の表示や、YouTubeの動画の再生などができます。声の識別も可能なため、呼ぼかけた人のその日の予定を表示するということもでき、従来のスマートスピーカー以上に便利に使えますね。料理のレシピを尋ねたら、料理方法の動画が表示されるというような活用方法は、スマートディスプレイならではだと思います。
また、スマートホームのハブとして、家庭内のすべてのスマートデバイスや対応家電を一括で管理できる機能も搭載。「Home View」と呼ばれるアプリを起動すると、スマートデバイスの一覧が表示され、直接操作することができます。部屋毎のグループ表示や管理もでき、更に自宅以外のスマートデバイスも管理できるということで、あらゆるスマート機器のハブとして使うことができますね。インターネット経由での操作もできるため、外出先からであったり、遠く離れた実家やオフィスなどでも、スマート機器の管理が可能です。
最近は様々なメーカーからスマートディスプレイが販売され始めていますが、それらとの違いとしてカメラが付いていないという点が挙げられます。他のスマートディスプレイはビデオ通話機能を前面に押し出していますが、GoogleHome Hubではそれができないということですね。これはデメリットとも思える部分ですが、安心してどこにでも置けるように、という考えであえて排除されたということのようです。
アメリカ、イギリス、オーストラリアでは発売が決定。日本での発売は未定となっていますが、ぜひ日本でも販売してほしいスマートディスプレイです。
スマートデバイス市場最大のライバルとも言えるAmazonも、つい最近スマートディスプレイEcho Showを日本へ投入しました。詳細はこちらをどうぞ。
Google Home関連の記事も下記に色々とまとめています。
おまけ:第3世代Chromecast
こちらはMade by Googleで直接発表されたものではありませんが、イベント後にChromecastが第3世代へとアップデートされました。外見やサイズは第2世代とほぼ同じですが、WiFiが5GHzの802.11acに対応するようになり速度が15%アップ。それにより1080pの解像度で60fpsのストリーミングもサポートされるようになっています。
機能面では従来機種にあったGoogle Homeとの連携による、YouTubeなど動画配信サイトの音声コントロールのほか、今年後半にはChromecastをスピーカーグループに追加出来る様になるようです。グループ内の他スピーカーで音楽を再生したり、複数のスピーカーで同時再生させるマルチグループ機能が追加されるようですね。日本での発売もすでに開始しており、価格は4,980円となっています。
まとめ
検索エンジンやソフトウェア関連のイメージが強いGoogleですが、最近はスマートスピーカーやWiFiメッシュルーター、そして今回のPixelシリーズなど、ハードウェア製品のリリースも積極的におこなうようになっていますね。このような取り組みは、ハードとソフトが共に成熟しユーザーエクスペリエンスの向上に繋がるため、いちユーザーとしても非常に歓迎すべきことだと思います。
特に今回発表されたPixel 3はGoogleならではのAI技術を、惜しむことなく投入したスマートフォンとなっており、まさに優秀なソフトウェアに最適なハードウェアを組み合わさることで、完成した製品と言えますね。日本のスマートフォン市場はiPhoneが圧倒的と言っても良い一強状態ですが、このPixel 3の登場でどのように変わっていくのかも非常に楽しみです。
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